2024 年 39 巻 1 号 p. 43-47
老年症候群(geriatric syndrome)は,加齢による身体的精神的機能の低下により,高齢者特有の症状・障害に陥ること,もしくは高齢者によくみられる非常に多岐にわたる心身の諸症状・徴候の総称とされる.近年では老年症候群と言わず,「高齢者に特有な病的状態(geriatric condition)」とも表現されている.2007年に我が国はいわゆる超高齢社会(super aging society)となった.膵疾患の診療においても,20年前に比べて高齢者を診療する機会が増えたと感じられる.高齢者はさまざまな併存症や既往症を持ち,加齢による徴候もあるために,高齢者としての特性を考慮した診療が必要となる.本稿では老年症候群にかかわる膵疾患の診療に関する最近の知見について概説した.