2024 年 39 巻 2 号 p. 167-171
症例は72歳,男性.左鼠径部膨隆を主訴に前医を受診し,左鼠径ヘルニアの診断で当科紹介となった.左鼠径部に立位でピンポン球大の膨隆を認め,臥位で軽快したが,陰嚢の腫大は残存したため,腹部造影CT検査を施行したところ,膵体尾部癌,傍大動脈リンパ節転移を認めた.腫瘍の浸潤により左腎静脈は閉塞し,途絶した左腎静脈から陰嚢にかけて左精索静脈瘤の発達を認め,陰嚢腫大の原因と考えられた.
切除不能膵癌の診断でゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法を2コース施行したが,PDの判定となった.現在は2nd lineとしてイリノテカンを施行しており,診断から12ヶ月生存中である.
鼠径ヘルニアを疑われたことを契機に悪性腫瘍の診断となった例は稀である.その中でも,膵癌の腎静脈浸潤による精索静脈瘤は本邦では本症例を含めて2例と稀な症例を経験したため文献的考察を交えて報告する.