日本海水学会誌
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小型発電機からの排気ガスの海水淡水化への有効利用
田中 大Chang-Dae Park
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2010 年 64 巻 4 号 p. 211-216

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抄録

小型発電機からの排気ガスを利用する海水淡水化蒸留器について,その熱的挙動および蒸留性能を理論的に解析した.小型発電機からの排気ガスは,熱量自体が小さいため,これまでに有効利用されてこなかったが,この排熱は,太陽熱蒸留器の付加的熱源として利用できる可能性がある.本蒸留器は,狭い間隔で平行に配置された複数枚の仕切り板から構成され,それぞれの仕切り板に貼り付けられたウィックには一定量の海水が連続的に供給される.排気ガスの熱はヒートパイプを介して蒸留器へと移動するが,蒸留器内部において蒸発・凝縮の過程を繰り返すことにより,この熱が何度も再利用される.解析の結果,本蒸留器は排気ガスの熱量を十分に有効利用することができ,仕切り板の枚数が10枚の場合,排気ガス(250℃)の流量が32.8,16.4および8.2m3hour-1において,1時間に約5.5,3.3および1.9kgm-2の蒸留量が得られることが予測された.この結果,本蒸留器を数時間運転することにより得られる蒸留量は,太陽熱蒸留器の屋外実験における集熱面積1m2当りの1日の最高蒸留量に匹敵することが明らかとなった.

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© 2010 日本海水学会
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