抄録
分子量45 kDaのキチナーゼが海に棲むバクテリアであるAlteromonas marina(A.marina) から精製された.このキチナーゼは,炭素源にコロイダルキチンを用いてA.marinaを4日間培養させた培養液から得られた粗酵素を,陽イオン交換クロマト分離法を用いて得たものである.得られた2つのキチナーゼをChi-A,Chi-Bと名付けた.Chi-AとChi-Bは粗酵素からそれぞれ6.73倍と1.32倍の倍率で精製された.Chi-Aの最適pHは7.0とわかり,pH 4.0から9.0の範囲で安定であった.Chi-Aの最適温度は45 ℃であり,45 ℃までは安定であるが,この温度を超えると失活した.この酵素は(GlcNAc)5を(GlcNAc)3と(GlcNAc)2に,(GlcNAc)4を2分子の(GlcNAc)2に分解するとともに(GlcNAc)3と(GlcNAc)1に,さらに(GlcNAc)3を(GlcNAc)2と(GlcNAc)1に加水分解した.(GlcNAc)2はChi-Aによって分解されなかった.反応速度定数を上述の反応機構に基づいて算出した.その結果,(GlcNAc)5の加水分解に対する反応速度定数k5は(GlcNAc)4に対するk4や(GlcNAc)3に対するk3よりも大きいことがわかった.