傾斜させた積層構造の多重効用海水蒸発濃縮器の大気圧中稼働および減圧缶内稼働について,一次元定常モデルを構築し解析した.濃縮器の底部は100 ℃以下で加熱され,缶内は底部加熱温度
Tbtmに対応する真水の飽和蒸気圧まで減圧されるものとした.解析結果より次の知見が得られた.①減圧缶を用いない大気中稼働において,加熱温度
Tbtmの低下とともに蒸発倍率(
COP)は増加するが,総蒸発量は大幅に減少し指数関数的にゼロに漸近する.②減圧缶内稼働においては,
Tbtmの低下に伴う総蒸発量の減少は大幅に抑制されるとともに,蒸発倍率(
COP)はさらに増大する.③濃縮器上面から周囲空気までの温度落差は,大気中稼働の2~12 %に対し,減圧缶内稼働では全温度落差の15~22 %を占める.④加熱温度
Tbtmの低下によって供給海水の昇温に要する熱量が低く抑えられ,また減圧することによって濃縮器への入力熱量
qp,
1および各段に流入する熱量に対する蒸発熱量の割合が増大するので,低い加熱温度
Tbtmでの減圧缶内稼働により,上記②で述べた高い性能が得られる.
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