抄録
2種類のポリエチレン(PE)フィルムを基材に用いて,電子線グラフト重合法を適用し,製塩用陰イオン交換膜を作製した.PEフィルムの2種類の材質は,高密度PE(HDPE)および超高分子量PE(UHMWPE)である.PEフィルムに電子線を照射した後,クロロメチルスチレン(CMS)のキシレン溶液に浸漬させて,CMSグラフト重合膜を得た.引き続き,トリメチルアミン水溶液に浸漬させることによって,膜に4級アンモニウム基を導入した.得られた陰イオン交換膜のイオン交換容量,含水率,膜抵抗,および引張強度を測定した.HDPEベース陰イオン交換膜の引張強度は3000~4000 N/cm 2 ,UHMWPEベース陰イオン交換膜の引張強度は4500~6000 N/cm 2 の範囲となった.いずれも現行の陰イオン交換膜Selemion® ASAの引張強度である2500 N/cm 2 を超える引張強度を有していた.本研究で作製した陰イオン交換膜を現行の陽イオン交換膜Selemion ® CSOとペアにして電気透析槽に設置して,0.5 mol/L NaCl水溶液をモデル海水として使って濃縮性能を評価した結果,2種類のPEフィルムともSelemion® ASAよりも高い濃縮性能を示した.UHMWPEベース陰イオン交換膜のかん水濃度はSelemion® ASAのそれより5~10 %高かった.