日本海水学会誌
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電子線グラフト重合法によるポリエチレン基材製塩用イオン交換膜の製造(その2)陰イオン交換膜
永谷 剛佐々木 貴明斎藤 恭一
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2018 年 72 巻 2 号 p. 96-103

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抄録
2種類のポリエチレン(PE)フィルムを基材に用いて,電子線グラフト重合法を適用し,製塩用陰イオン交換膜を作製した.PEフィルムの2種類の材質は,高密度PE(HDPE)および超高分子量PE(UHMWPE)である.PEフィルムに電子線を照射した後,クロロメチルスチレン(CMS)のキシレン溶液に浸漬させて,CMSグラフト重合膜を得た.引き続き,トリメチルアミン水溶液に浸漬させることによって,膜に4級アンモニウム基を導入した.得られた陰イオン交換膜のイオン交換容量,含水率,膜抵抗,および引張強度を測定した.HDPEベース陰イオン交換膜の引張強度は3000~4000 N/cm 2 ,UHMWPEベース陰イオン交換膜の引張強度は4500~6000 N/cm 2 の範囲となった.いずれも現行の陰イオン交換膜Selemion® ASAの引張強度である2500 N/cm 2 を超える引張強度を有していた.本研究で作製した陰イオン交換膜を現行の陽イオン交換膜Selemion ® CSOとペアにして電気透析槽に設置して,0.5 mol/L NaCl水溶液をモデル海水として使って濃縮性能を評価した結果,2種類のPEフィルムともSelemion® ASAよりも高い濃縮性能を示した.UHMWPEベース陰イオン交換膜のかん水濃度はSelemion® ASAのそれより5~10 %高かった.
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© 2018 日本海水学会
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