日本塩学会誌
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食塩層の伝熱
杉山 幹雄
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1964 年 17 巻 5 号 p. 250-258

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抄録
(1) 食塩の固結と密接な関係を有する食塩層の伝熱現象に対して, 食塩層がマクロ的に均質と見なされる場合には一般の熱伝導の理論が適用され (対流および輻射による伝熱は無視することができる), 層内における温度変化はその温度伝導率を定めれば理論的に求められることを知った.
(2) E. D. WILLIAMSON & L. R. ADAMSの式を利用して球型のフラスコに一定の充填条件において水分調製した種々の食塩サムプルを充填し, 表面温度を急変させた場合の中心温度の変化を測定して水分と温度伝導率の関係を求めた. 食塩層における熱伝導の抵抗はほとんど各結晶間の接点部分にあり, 結晶表面の附着液の大部分は表面張力によつて接点部分に集まると考えられる.
(3) 接点の状態について半径の等しい球が接点間距離lをへだてて接し, 結晶表面の附着液が表面張力によつて接点の周囲に引寄せられている模型を考え, 特にlの物理的な意味について考察した. この接点模型は結晶のマクロ的形状や粒度分布の異なる各種の食塩サムプルに対する伝熱実験の結果に矛盾なく適用されることが判明した. lは結晶表面のミクロ的な粗さに関係し, 各種の食塩そのものに対する特性値と見てよいものと思われる. 結晶表面のミクロ的な粗さは精製塩, 粗粒子塩では2μ程度であり, 上質塩ではこれよりもかなり組いものと見なされる.
(4) サムプルの充填条件を変化させた場合および食塩層において固結が生じた場合の温度伝導率についても考察した. また, 精製塩が上質塩に比べて固結しやすい傾向を有することを物理的な面から推定した.
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