日本海水学会誌
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脱塩率とかん水組成
イオン交換膜海水濃縮法におけるスケールに関する研究 (第1報)
武本 長昭
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1968 年 21 巻 6 号 p. 235-240

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抄録

イオン交換膜法による海水濃縮の際の, 脱塩率の変化によるかん水組成と, 濃縮膜面におけるスケール成分の濃度の変化を検討した. 実験は, アニオン膜のみ2価イオン難透過性 (“選択性”) 膜の系と, アニオン膜カチオン膜とも “選択性” 膜の系とについて行なった. 海水から出発して, 脱塩液中の各イオンの減少の過程を, 脱塩液中の各イオンの補正濃度の, 海水中の濃度に対する比率 (“残存率”) で図示した. ある脱塩率における各曲線上の値の1 からの差に, 海水中のそれぞれのイオンの濃度を乗じた数値の割合は, かん水中のイオン濃度比を与え, 接線の勾配に海水中のそれぞれのイオンの濃度を乗じた数値の割合は, 膜透過イオン比率を与える. アニオン膜面において, 脱塩率が大になると炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウムの濃度が急激に大になる. これは実際のスケール析出の観察と一致し, 局部的な過度の脱塩が, 膜面へのスケール析出の, 重要な原因の一つであるように思われる.“選択性” 膜を濃縮側で接近させた場合にも, スケ一成分濃度が大になる傾向があり, これはスケール析出問題における, 将来の問題を示唆している. 選択透過率の表示方法の改善によって, ナトリウムイオンあるいは塩素イオンの “残存率” が0.2以上において, 脱塩率の変化によるかん水組成の変化を表示することができ, また膜面組成の計算も可能である. 今後, 膜の特性を, 透析条件の変化に応ずる透析結果の変化の仕方で表示することが必要となろう.

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