抄録
1) 塩素イオンの吸着能の大きさは無定形含水酸化鉄, β-オキシ水和酸化鉄, α-オキシ水和酸化鉄の順で, 無定形の吸着能が一段とよく, また比較的安定性が高い,
カリウムイオンの吸着は無定形含水酸化鉄のみに認められたが吸着量は少ない.
2) 無定形含水酸化鉄では試料調製時の母液pH7の沈殿が最大の塩素イオンの吸着能を示し, それよりも母液pHが増加または減少するにしたがつて, 吸着能は劣つてくる.
カリウムイオンの吸着は母液pHが低い試料ほどよい.
α-オキシ水和酸化鉄では沈殿生成時の母液pHが小さいほど吸着能はよい.
β-オキシ水和酸化鉄では加水分解温度が低いほど吸着能はよい.
これらの試料調製条件の変動に基づく吸着能の変化は同一変態内では比較的小さい.
3) α-およびβ-オキシ水和酸化鉄において, 母液pHまたは加水分解温度と吸着能および結晶子の大きさの間に相関関係が見られる. すなわち試料調製時の母液pHや加水分解温度が増すと結晶子は大きくなり, それにしたがつて吸着能は減少してくる.
4) 沈殿の熟成時間が短いほど吸着能はよいが, あまり大きな差は認められなかつた. ある一定の熟成時間を経て結晶成長が終ると吸着能は一定になる.
5) 沈殿の調製において, 添加アルカリ溶液としてアンモニア水を用いた方が水酸化ナトリウム溶液よりも吸着能の大きい試料が得られる. また沈殿の洗浄の点からも好ましい.
6) この吸着は試料の緩衝性から考えてイオン交換吸着によるものと思われる.