抄録
イオン濃厚にがりは, 従来の生濃厚にがりと同様に常圧下で蒸発濃縮 (158-160℃) して, 液状のまま処理してフレークまたは微粒子状とすることはできにくい. この原因が塩化カルシウムの含有によると考えられるところから, まず濃縮時における塩化カルシウムの含有限界を明らかにし, さらには塩化カルシウム共存下において添加する有効塩を見出すことを目的とし, 主としてMgCl2-H2O, CaCl2-H2O, MgCl2-CaCl2-H2O, 生濃厚にがりおよびイオン濃厚にがりなどの蒸発濃縮に伴う粘度 (CP) の変化を測定するとともに, 系の様相を観察した. その結果, 塩化カリの一定量の添加が有効であることを認めた. たとえば, イオン濃厚にがり組成に相当する塩化マグネシウム20%と塩化カルシウム7-9%を含む水溶液に塩化カリを3-5%添加すると, 158℃ に蒸発濃縮しても液状でCP約20である. このとき塩化カリは, tachhydrite形成を抑制するのではないかと考えられる.