日本海水学会誌
Online ISSN : 2185-9213
Print ISSN : 0369-4550
ISSN-L : 0369-4550
本邦温泉水中のホウ素同位体比に及ぼす海水の影響
大井 隆夫武蔵 正明野村 雅夫小坂 知子岡本 眞實垣花 秀武
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 45 巻 1 号 p. 29-34

詳細
抄録
本研究を要約すると, 以下のようになる.
1) 本邦27温泉水中のホウ素同位体比 (11B/10B) を測定した. ホウ素含有量の平均値は7.52mg/dm3であり, 同位体比の測定値は11B/10B=4.023~4.107の範囲であった.
2) 27温泉水は, ホウ素同位体比の観点から, 二つのグループに分けることができる. 高い11B/10B値 (>4.07) を示すグループと低い値を (<4.07) 示すグループであり, 二つのグループの地理的分布は, かなり系統的である. 本邦温泉水は全般的には低い同位体比を持つグループに属するが, 箱根-草津白根以東東北地方の温泉水は高い同位体比を示す.
3) 高いホウ素同位体比を示す温泉水は, 地球上で普通に存在する天然試料中で最も高い同位体比 (~4.2) を持つ海水の影響を受けているものと考えられる. これは, 太平洋プレートの沈み込みに伴う海水起源のホウ素のマグマへの取り込まれの過程を考えることにより理解することができる. 一方, 低い同位体比を示す温泉水は, 海水の影響を受けていないものと考えられる.
著者関連情報
© 日本海水学会
前の記事 次の記事
feedback
Top