日本海水学会誌
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塩類水和物の転移温度からみた乾燥減量測定温度条件の検討
塩の付着母液成分の熱的変化 (第1報)
新野 靖西村 ひとみ有田 正俊
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1992 年 46 巻 3 号 p. 150-157

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抄録

塩の付着母液成分の乾燥時の組成とその熱的変化を明確にし, 測定温度の差による乾燥減量の差の要因を明らかにするとともに, 転移温度の測定結果から乾燥減量測定温度条件の検討を行い,以下の結果を得た.
(1) 乾燥減量測定に影響するおもな水和物として, イオンかん水系ではカーナライト, タキハイドライトおよび塩化マグネシウム六水和物が, 天日かん水系ではカーナライト, 塩化マグネシウム六水和物および硫酸カルシウム二水和物が認められた.
(2) カーナライトの転移開始温度は, 約95℃および約145℃, タキハイドライトは約135℃, 塩化マグネシウム六水和物は約110℃および約160℃5硫酸カルシウム二水和物は約105℃および108~115℃であった.
(3) ISOの110℃と「塩試験方法」の140℃は, 塩類水和物の転移温度に近接していた.
(4) 110℃と140℃の間には, タキハイドライトの転移および塩化マグネシウム水和物の熱分解の開始温度があり, これらの減量が両温度での測定値の差の要因であることが認められた.
(5) 120~130℃および170~200℃が,(1) に示した塩類水和物の転移がなく, 比較的安定した測定温度範囲と考えられた.
以上の結果は, 現在の乾燥減量の測定温度は問題点を含んでいることを示している. 乾燥減量は, 分析結果および現場での品質管理においても重要な項目であり, これらへの影響を考慮し, 乾燥時間を含めた条件の検討が今後必要と思われる.
また, 水和物の転移温度については, 現在分析法等の進歩にともない詳細な検討が可能になっており, 以前の測定値と差があるものが多く, 今後, 海塩試料に関する水和物の熱的変化についてさらに検討する予定である.

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