日本海水学会誌
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苦汁処理工場における炭酸カリの製法
坂本 佳六塩田 益稔
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1992 年 46 巻 3 号 p. 158-170

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抄録

現在のイオン製塩苦汁量の生産が, かん水のNaCl純塩率93%以上の上昇の結果として, 減少の一途をたどっている. それにもかかわらず, 苦汁工場にて多量の粗塩化カリが回収されている. しかしその用途は必ずしも, カリ本来の化学特性を有効に生かしたものではない. 高度化した硫酸カリ肥料の生産実績をもつものではあるが, 肥料向けでなく, より高度の付加価値をもつ工業製品志向という願望のもとに炭酸カリを製造する試験を行った. 炭酸カリ製造法のEngelprecht法を苦汁工場に適合, 改善, 修正した. Engelprecht法使用の塩基性マグネシウムの代わりに, 水酸化マグネシウムケーキを使用すること, 炭酸ガスの高濃度のもの代替に, 工場排煙ガスの低濃度のものを使用すること, 反応促進のため, 少量の苛性カリを添加すること. がEngel-precht法の修正項目である. 相律を基幹とした製造理念に徹した試験方法のラボラトリー予備試験をして, さらに模擬中間工業試験を行った.
中間工業試験において, 反応吸収液に懸吊濁液中のMgO濃度はMgO 2%程度である. 排煙ガスCO2濃度が12%と希薄なために, MgO濃度が高いと, 吸収液が糊化する. 反応速度促進のため吸収器中にラシヒリングを補填すること, 吸収器を水冷すること, 35℃が最高温の限度である. ガス流速, 1.0~1.2m/s, 吸収液対ガスの倍数約1,000~800程度, 希薄なCO2 Gas排煙ガスを使用して, 良質のEngel salt製造可能を確認した. KOH液製造にはジイーメンス式電解槽模型を用いた. このEngel salt製造法は排煙ガスの脱硫にも役立つ, 生成SO4は製品中に移行せず, 母液中に全部残存する, 模擬中間工業試験の規模は現場の炉の規模の1/101であった. Engel saltの組成, 最終製品のK2CO3の組成は次のとおりEngel salt K Mg Cl SO4 K収率
15.8 9.5 1.4 0.03 48.3%
炭酸カリ K2CO3 KCl KHCO3 K2O Engel saltからのK収率
86.5 0.1 2.2 60.0% 75.0%
工業採算可能製造規模として, 重油使用量1日当り約7t, 生産炭酸カリ量4.7t, 月産118tと推測する.

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