抄録
イオン交換系におけるリチウムイオンの水和状態を半経験的分子軌道法PM3tmによって計算した. 溶液中の構造モデルとしてブリーの3~6水和イオン, および樹脂中の構造モデルとしてベンゼンスルポン酸陰イオンに3~6水和リチウムイオンが配位したモデルの最適化構造を求め, それらリチウム化学種の生成熱を計算した. その結果, 樹脂中の構造モデルでは, 溶液相中のモデルに比べて, 水和結合の距離の平均値γLi-Oが大きくなるとともに, 水和による安定化エネルギーが小さくなることが示された. 樹脂中の4水和イオンの構造モデルでは, 生成熱の値の近い2種の水和状態が得られた. 各最適化構造の生成熱の比較から, 樹脂相に存在するリチウムイオンの水和数の分布が, 溶液相にある場合と比較して水和数の小さくなる方向へ片寄っていることが示唆された. これらの結果は, 樹脂相におけるリチウムイオンの水和が, 溶液相に比べて弱くなっていることを示しており, イオン交換系において観測されているリチウム同位体効果の傾向と一致した.