抄録
製鋼スラグの, 沿岸海域における水質・底質の改善, および魚礁材等への有効利用の可能性を検討するため, 製鋼スラグを海底に設置して基礎的研究を行った. 実験では, 1997年1月の海水循環期および8月の海水停滞期に製鋼スラグを海底に設置し, pH, マグネシウム, カルシウム, アンモニウム塩, 亜硝酸塩, 硝酸塩, リン酸塩および硫化水素の経年変化を調べると共に, スラグ表面への付着生物についても検討を行った.
粒径の小さいスラグ (30mm以下) については, スラグ設置直後に近傍海水およびスラグ間隙水中でのpH上昇が認められたが, 近傍海水のpHは数時間で周辺海水と同程度まで低下し, 数百時間後には影響が全く認められなくなることが分かった. 海水のpHが高くなる影響として, 粒径の小さいスラグの設置層表面には, 海水中のマグネシウムとスラグから溶出したカルシウムの水酸化物および炭酸化物の白色固結物の析出が観察された. さらに, 製鋼スラグ近傍海水および間隙水中でアンモニウム塩とリン酸塩の低下が認められた. また, 製鋼スラグの表面には, 付着珪藻類, ゴカイ類, フジツボ類, ホヤ類, 緑藻類などの繁殖が観察されたことと, 粒径の大きな製鋼スラグ (150mm-70mm) の間隙にハゼ, アナゴ, カニなどの棲息も観察されたことから, 製鋼スラグが水質・底質改善材, 魚礁材として利用可能であることが明らかになった.