日本海水学会誌
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海水の電解処理による炭酸塩の生成特性
大気CO2のグローバル削減に関する提案
蓼沼 克嘉鈴木 潤新井 修黒澤 きよ子吉田 幸介
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2003 年 57 巻 2 号 p. 103-112

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抄録

海洋への大気CO2の吸収を促進させる方法として, 海水に含まれるCaイオンと炭酸種イオン (HCO3-, CO32-) を電気化学処理により反応させ, 炭酸カルシウム (CaCO3) を生成させることによって海洋表層の炭酸濃度を低下させる検討を行った. 海水を多孔質隔膜を介してフロー型電解処理した結果, カソード側で多量のH2ガスと2~20μmサイズのCaCO3微粒子が生成し, アノード側では少量のO2ガスが発生した. この電解処理によるCO2の気相への放出は無く, しかも生成CaCO3を沈降分離したカソード液とアノード液の混合海水のpHは8.3~8.7となり, 供試海水 (pH 8.1前後) に比ベアルカリ性となった. 海水の電解処理によって生成した沈殿物はaragonite-CaCO3とbrucite-Mg(OH)2が混在しており, 電解処理条件によってその生成量, 化学組成等が様々に変化した. 海水の電解処理によって海洋表層の炭酸イオンをCaCO3として沈降・海底堆積 (安定な固体の炭酸塩として生物圏から隔離) させれば, 表層海水の大気中CO2の吸収が促進されるものと考えられる, この方法は, 海洋表層の炭酸の深海への移動速度が遅いことに起因する大気中CO2の蓄積による地球温暖化問題の対策方法の一つとして利用できる可能性がある.

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