海洋への大気CO
2の吸収を促進させる方法として, 海水に含まれるCaイオンと炭酸種イオン (HCO
3-, CO
32-) を電気化学処理により反応させ, 炭酸カルシウム (CaCO
3) を生成させることによって海洋表層の炭酸濃度を低下させる検討を行った. 海水を多孔質隔膜を介してフロー型電解処理した結果, カソード側で多量のH
2ガスと2~20μmサイズのCaCO
3微粒子が生成し, アノード側では少量のO
2ガスが発生した. この電解処理によるCO
2の気相への放出は無く, しかも生成CaCO
3を沈降分離したカソード液とアノード液の混合海水のpHは8.3~8.7となり, 供試海水 (pH 8.1前後) に比ベアルカリ性となった. 海水の電解処理によって生成した沈殿物はaragonite-CaCO
3とbrucite-Mg(OH)
2が混在しており, 電解処理条件によってその生成量, 化学組成等が様々に変化した. 海水の電解処理によって海洋表層の炭酸イオンをCaCO
3として沈降・海底堆積 (安定な固体の炭酸塩として生物圏から隔離) させれば, 表層海水の大気中CO
2の吸収が促進されるものと考えられる, この方法は, 海洋表層の炭酸の深海への移動速度が遅いことに起因する大気中CO
2の蓄積による地球温暖化問題の対策方法の一つとして利用できる可能性がある.
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