抄録
海水中のヨウ化物及びヨウ素酸イオンを同時定量するために, 泳動液として塩化セチルトリメチルアンモニウム (CTAC) を添加した人工海水, オンライン濃縮法として, リン酸イオンをターミナルイオンとする一時的等礁気泳動 (TITP) を用いたキャピラリーゾーン電気泳動法 (CZE) を開発した.ヨウ化物及びヨウ素酸イオンの両者にTITP効果を作用させるために, 泳動液に20mmol/lCTACを添加し, ヨウ化物イオンの移動度を減少させた.本法の検出限界 (LOD, S/N=3) はヨウ化物イオンで4.0μg/l, ヨウ素酸イオンで5.0μg/lであった.泳動時間, ピーク面積, ピーク高さの相対標準偏差 (RSD, 0.05mg/l, n=8) はそれぞれ, ヨウ化物イオンについては0.6, 4.2, 3.6%であり, ヨウ素酸イオンについては0.3, 8.4, 6.2%であった.本法により, 大阪湾沿岸で採取した表面及び海底付近の海水試料中のヨウ化物及びヨウ素酸イオンを定量した.また, 標準添加実験を行った結果, ほぼ満足できる回収率 (ヨウ化物イオン87~112%, ヨウ素酸イオン93~112%) が得られた.