日本原子力学会和文論文誌
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原子力発電所における小型壁面除染ロボットシステムの開発
藤田 恒昭高橋 剛史
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2004 年 3 巻 2 号 p. 208-214

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抄録
現在,原子力発電所における原子炉ウエル(以下,ウエルという)除染および機器貯蔵プール(Dryer Separa-tor Storage Pool,以下,D/Sプールという)除染,原子炉キャビティ(以下,キャビティという)の壁面除染を自動化することは,除染作業者の被曝を極力抑えるためにも重要である。このため著者らは大型の壁面除染ロボットを開発し,さらに実用化に成功した。現在,このロボットを駆使して除染作業を行っている。しかし大型の壁面除染ロボットでは,装置の設置等の準備作業および後片付けに要する時間のかかり過ぎ,天井クレーンを使用するために生ずる工程調整,保管場所を広く確保するために生ずる仮置き場所問題,また,経済的なコスト高等の問題点がある。加えて除染箇所もD/Sプールのキャナル部やコーナ部等の狭隘部があり,これらの箇所は大型ロボットでは除染が困難であり,さらに,キャビティ内はウエル以上に狭く障害物も多く,このため狭隘部の除染は大型ロボットでは不可能であった。このため,小型でかつ,高性能のロボットの開発が緊要の課題になっている。また近年,定期点検の更なる短縮化およびコスト削減化等の新たな要求が発生しており,これらの諸問題に応えるために,本研究において壁面除染ロボットの小型・軽量化の研究開発を行った。
壁面除染ロボットに要求される主な仕様は,(1) 作業時の安全性,(2) 被曝の低減,(3) 除染性能,(4) 作業の効率化,(5)コストの低減等である。これらは特に達成しなければならない設計思想といえる。各項目について具体的に述べると次の通りとなる。
(1) の安全性に関しては,過吸着時においても走行台車ロボットの転倒の恐れがないことおよび,異物混入防止対策が十分に取られていることが必要となる。(2) の被曝の低減に関しては,放射線防護上,ダストおよびミストの発生が少ないことおよび,遠隔操作が可能なことが求められる。(3) の除染性能に関しては,表面汚染密度を放射線管理基準である0.4Bq/cmcm2以下に容易に下げることができることである。(4) の作業の効率化に関しては,ロボットによる除染を行った後の,手除染作業工程をできるだけ少なくするため,ロボットによる除染面積の拡大が可能なことおよび,メンテナンス性が容易であること。また,壁面に対する吸着性が高く,ロボットの吸着が外れにくいこと等である。(5) のコストの低減に関しては,経済的で低コストであること等である。
著者らは,従来からウエル,キャビティ等の極限環境下での壁面除染ロボットの開発を行ってきており,今までに開発した壁面除染ロボットは,国内におけるほとんどの原子力発電所のウエル,D/Sプール,キャビティ等の壁面除染作業で活躍している。
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© by the Atomic Energy Society of Japan
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