抄録
タグ付きCO 輸送モデルを用いて、アジア域のソース・レセプター (S-R) 解析を行った。モデルにはGEOS Chem Version 9-1-1 を用い、アジア域に10 ヶのタグ領域を設定した。全球計算結果を境界条件として、アジア域を0.5˚×0.667 ˚で高解像度化したネスト格子での通年計算を行った。タグ付きCO モデルの結果は、気象庁の地上のCO 観測(与那国、綾里、南鳥島)やMOPITT 衛星計測とよく対応した。与那国や綾里では、冬季から春季に間欠的なスパイク状のピークが見られ、日平均濃度は200 – 300 ppbv で、夏季にはCO は100 ppbv 以下に低下する観測の特徴をモデルはよく再現していた。S - R解析の結果から、中国CEC の高度1km の年平均CO 濃度は500 ppbv に達し、中国起源の寄与が80%以上であった。中国起源CO の寄与割合は、韓国で50%、日本上空でも35 - 40%に達し、中国寄与の広がりは非常に広範囲に及ぶことが示された。季節変動としては、与那国では、冬季から春季にかけて、中国起源のCO 寄与は50 %に達するが、非アジア領域CO も10 %強を取った。夏季にはCO の濃度自体は低下するが、自然VOC 起源から反応で生成されるCO の寄与が70%になり、明瞭な季節変化が見られた。このようなソース寄与の明瞭な季節変化は、綾里、南鳥島でも見られた。東経135˚線にそったソース寄与は、緯度方向に大きな勾配を取り、南ほど自然VOC 起源が大きく、その寄与は夏季に60−80 %に達した。CEC 寄与は北緯30˚− 40˚を中心として広い緯度領域に広がり、年間ベースで北緯20˚以北で30%を超えていた。