大気環境学会誌
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原著
ハイブリッド遺伝的アルゴリズムによるPM2.5モニタリングネットワークの最適化
荒木 真岩橋 香季嶋寺 光山本 浩平近藤 明
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2015 年 50 巻 1 号 p. 35-43

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抄録

PM2.5のモニタリングネットワークは既存測定局への追加配置を原則として急速に整備が進められているが、結果として適正な配置のネットワークが得られるかは不明である。モニタリングネットワークの最適化の研究では観測値を用いて最適化を行うことが多い。そのため、構築初期段階など測定値が対象領域の濃度分布を十分に代表しない場合にはその手法は適用できず、日本におけるPM2.5のモニタリングネットワークへの適用も困難である。本研究では観測値の代わりに大気質モデルによる計算値を用い、これにハイブリッド遺伝的アルゴリズムを適用して近畿地方におけるPM2.5観測網の最適化を行い、それと比較することで現在のネットワークの評価を試みた。得られた最適化ネットワークは比較的均一で対象領域全体の濃度分布を十分再現できる配置であった。現在のネットワークは高濃度域が出現する傾向がある大都市部では濃度分布を把握できる配置であるが、対象領域全体の代表性には向上の余地があり、それは既存ネットワークへの再配置によって実現可能であると考えられた。PM2.5測定機を既存測定局に設置することを原則とした配置方法は、おおむね妥当であることが示された。濃度が高い地域、あるいは人口が多い地域により多くの測定局が配置されるように、それぞれ濃度および人口による重み係数を導入して最適化を行ったところ、人口による重み係数は良好に動作して人口を反映したネットワークが得られた。

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© 2015 大気環境学会
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