大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
研究論文(原著論文)
スギから放出される揮発性有機化合物のOH反応性測定および化学分析
井田 明 岡島 美咲岸本 伊織呉 偉嘉Ramasamy Sathiyamurthi中嶋 吉弘加藤 俊吾茶谷 聡横内 陽子奥村 智憲梶井 克純
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 51 巻 2 号 p. 132-143

詳細
抄録
大気中の光化学オキシダントは、揮発性有機化合物とOHが反応し、NOXとの後続反応により生成する。そのため、人為起源のみならず植物起源の揮発性有機化合物 (以下BVOCs) についても数多くの研究がなされている。しかし、スギから放出されるBVOCsについては日本固有種であるがゆえに測定された例は少なく、特に総OH反応性測定に関しては研究例がない。そこで本研究ではスギから放出されるBVOCsについて総OH反応性測定および化学分析の観点から検討した。化学分析はガスクロマトグラフ水素炎イオン化法 (GC-FID) および陽子移動反応型質量分析法により23種類のBVOCsを測定し、得られた濃度から算出されたOH反応性の和と、総OH反応性測定装置により測定された総OH反応性を比較した。主要なBVOCsを測定したにもかかわらず、化学分析により測定した総OH反応性の説明率は38.8%に留まった。さらに、GC-FIDで検出されているが、化学物質が同定されていない未同定の化学成分がOH反応性にどの程度寄与するかを測定した。この方法により13種類の未同定BVOCsの存在が確認され、そのうちピーク強度が最大であったのはモノテルペン酸化体の一種であった。この成分は総OH反応性の18.1%を占めると推定され、その寄与を同定された成分と合わせると総OH反応性の56.9%を説明可能となった。
著者関連情報
© 2016 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top