大気環境学会誌
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研究論文(ノート)
VOC規制はローカルなオゾン高濃度にどれほど影響したか―気象影響を排除した詳細な検討―
吉門 洋
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2016 年 51 巻 5 号 p. 230-237

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抄録

光化学オキシダント(実質はオゾン)や微小粒子状物質の高濃度状況の改善を目指して、前駆物質である揮発性有機化合物(VOC)の排出規制が2006年度に施行された。施行後10年を経過して、その規制効果の検証が求められており、検証につながる近年のデータ解析やモデルシミュレーションに関する報告をレビューした。さらに本稿では、関東中央部におけるオゾン高濃度事象発生の典型気象パターンとして、早朝に首都圏が静穏で前駆物質が高濃度に蓄積し、それを含む気塊が朝以降に海風に輸送される過程で高濃度オゾンが発生した日をVOC規制までの7年間から抽出した。並行して、VOC規制後の7年間からも同じ気象パターンの日を抽出した。両グループのオゾン濃度の日変化を比較すると、海風の内陸進入が早い日には東京湾岸の濃度上昇が緩和されたが、内陸では変わっていない。一方、海風の内陸進入が遅い日は東京湾岸でも内陸でも顕著な改善はない。今後、VOC削減のような施策の検討に化学輸送モデルを活用するためには、この種のデータ解析結果に照らした気象再現性と汚染濃度レスポンスの検証が望まれる。

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© 2016 大気環境学会
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