2020 年 62 巻 5 号 p. 593-603
【背景と目的】一般的に切除不能悪性遠位胆道狭窄のドレナージには内径が太いself-expandable metal stent(SEMS)の方が閉塞再発までの時間(time to recurrence obstruction;TRBO)が長いと考えられているが,fully covered SEMS(FCSEMS)において内径別のTRBOについての検討はない.この多施設前向き研究の目的は,切除不能遠位胆管悪性狭窄患者における8mm径と10mm径のFCSEMSのTRBOと胆嚢炎や膵炎などの偶発症の頻度を比較検討することである.
【方法】この多施設前向き研究には18施設が参加した.エントリーされた患者は8mm径群と10mm径群に割付けされた.この両群においてTRBO,8mm径FCSEMSの10mm径に対する非劣性の有無の検討,全生存期間,偶発症の頻度とその種類,死亡時ステント開存率を比較検討した.
【結果】TRBOの中央値は8mm径群(n=102)と10mm径群(n=100)で有意差を認めなかった(275日と293日,P=0.971).8mm径群の10mm径群に対するハザード比は0.90であった(80%信頼区間は0.77-1.04であり上限が帰無仮説の許容ハザード比1.33より小さかった).この結果によってTRBOにおいて8mm径ステントは10mm径ステントに対して統計的に非劣勢であると判断された.全生存期間,偶発症の発症率,死亡時ステント開存率に有意差は認めなかった.
【結論】8mm径FCSEMSは10mm径FCSEMSにTRBOにおいて非劣性であった.この結果は今後のSEMS新規開発に重要である.
(UMIN 000013560)