大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
研究論文(技術調査報告)
石英繊維ろ紙に捕集したPM2.5中の有機トレーサー成分におけるガス吸着の影響
池盛 文数 山神 真紀子菅田 誠治
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 53 巻 2 号 p. 70-78

詳細
抄録

本研究では、夏、冬、春にPM2.5を並行捕集した石英繊維ろ紙とPTFEろ紙の試料について有機物濃度を比較し、石英繊維ろ紙に対する有機トレーサー成分のガス吸着の影響を考察した。その結果、各季節における二つのろ紙中の有機物濃度は、テレフタル酸、3-ヒドロキシグルタル酸、3-メチルブタン-1,2,3-トリカルボン酸、リンゴ酸、フタル酸がよく一致していた。一方で、ピノン酸のように石英繊維ろ紙中の濃度が数十倍高い成分もあった。また、二つのろ紙における有機物の濃度比の季節傾向は成分によって異なっていたが、成分間における濃度比と比べて小さかった。二次生成の有機トレーサーである2-メチルトレイトール、2-メチルエリスリトール、2,3-ジヒドロキシ-4-オキソペンタン酸は、二次生成が活発であると考えられる夏において、石英繊維ろ紙の値がPTFEろ紙よりも大きくなる傾向が見られ、ガス吸着の影響が大きいことが示唆された。石英繊維ろ紙とPTFEろ紙の下に石英繊維ろ紙を置いて二段にし、石英繊維ろ紙に対するガス状有機物の吸着について調べた。その結果、ピノン酸の大部分は24時間捕集において粒子として捕集されず、石英繊維ろ紙にはガス吸着していると考えられた。以上のように、有機トレーサー成分測定は、石英繊維ろ紙を用いた場合、ガス吸着の影響が季節により異なること、またそれ以上に、成分間におけるガス吸着の影響の大きさが異なることが示唆された。

著者関連情報
© 2018 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top