2018 年 53 巻 5 号 p. 165-185
タクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原など砂塵嵐がよく発生する北東アジア地域の砂漠・乾燥地帯の8地域において、1998年から10年以上にわたり表層土64試料を採取した。その表層土から細粒試料(粒径<100 μm)および微小試料 (<10 μm) を分離し、化学組成分析を行った。ゴビ砂漠東地域の試料は、CO3-C, Ca, Mgの含有量が他地域に比べ有意に低く、土壌色は最も明度が低く黄赤色を帯びていた。ゴビ砂漠東地域のCO3-Cは<0.5%、薄黄灰色の土壌色を呈すタクラマカン砂漠地域のCO3-Cは1.8%と高く、8地域の土壌色と炭酸塩鉱物の含有量の間に明瞭な関係性が認められた。風化抵抗性が強くかつ土壌中の主成分元素であるAlを基準とする元素含有量比のばらつき(地域差と呼ぶ:RSD%)は地域間の特徴を表している。地域差が大きかった主要元素はCO3-C, Ca, Mg, P, Sr (RSD;15–63%)、地域差が小さかった元素はK, Ti, Ba (RSD;7–9%) であった。地域差の大きかった主要元素Ca, Mg, P, Srを解析因子として、日本に飛来した典型的な黄砂16事例と本報告の8地域表層土によるクラスター解析を行い、その類似度による黄砂発生源地域の推定をした。クラスター解析による16事例の発生源地域の推定結果とSYNOP情報による砂塵嵐の観測地域と一致性が認められた。