大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
研究論文(原著論文)
2001–2015年における大気中有害大気汚染物質濃度のトレンド解析
猪股 弥生 梶野 瑞王植田 洋匡
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 55 巻 2 号 p. 78-91

詳細
抄録

有害大気汚染物質(優先取組物質21種類)の属性別(一般環境 (I)、固定発生源周辺 (H)、沿道 (E))及び、属性ごとの地域別(日本全国 (JPN)、阪神 (HAN)、関東 (KAN)、九州 (KYU)、瀬戸内 (SET)、東海 (TOK)、本州日本海沿岸 (SOJ))の濃度の2001–2015年の期間についてトレンド解析を行った。いくつかの物質(1,2-ジクロロエタンI 29%、H 77%、E 34%増加率、クロロホルムH 7%、酸化エチレンH 1%、ヒ素及びその化合物、H 37%)を除くと、有害大気汚染物質の[濃度](トレンド解析結果の主成分と季節変動成分の和)は、2001–2015年の期間に、Iで12–75%、Hで17–58%、Eで17–70%減少していた。環境基準値あるいは指針値の設定がある有害大気汚染物質の[濃度]は環境基準値あるいは指針値より小さい値であった。Iにおけるジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ヒ素及びその化合物、1,3-ブタジエン、ベンゼンは冬春季に[濃度]が高いことからアジア大陸からの越境輸送の寄与が大きいと考えられた。アクリロニトリル、アセトアルデヒド、水銀その他の化合物、ホルムアルデヒド、塩化メチルは、夏季に[濃度]が高く、国内発生源からの寄与が大きいと考えられた。ベンゾ[a]ピレンは1月(大)と5–6月(小)に、その他の物質は5–7月(大)と9–10月(小)にピークの双山分布あるいは春夏季にピークであることから、越境輸送と国内発生源寄与の混合タイプであると考えられた。Hにおける有害大気汚染物質の[濃度]は、IとEの有害大気汚染物質の[濃度]と比較して高い値であった。IとEの有害大気汚染物質の季節変動は類似していることを考えると、Hにおける有害大気汚染物質の[濃度]変動は局所的な発生源の影響を反映しているものと考えられた。多くの物質において、I、H、Eのいずれの属性についても、その[濃度]の減少は2000年代初めに大きく、2010年頃から地域による濃度差が小さくなる傾向にあった。

著者関連情報
© 2020 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top