大気環境学会誌
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研究論文(原著論文)
アスコルビン酸アッセイを用いた酸化能測定におけるアスコルビン酸の酸化メカニズムの解明
杉本 和貴 奥田 知明長谷川 就一西田 千春原 圭一郎林 政彦
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2021 年 56 巻 5 号 p. 96-107

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抄録

大気粒子は呼吸器系の奥まで入り、生体に深刻な影響を与える可能性があると指摘されている。本研究ではサイクロン法を用いて捕集した大気中の微小粒子と粗大粒子を用い、大気粒子の生体影響を評価する化学的手法であるアスコルビン酸アッセイによる酸化能(OPAA: Oxidative Potential)測定を行った。2017年の4季節において、神奈川、埼玉および福岡の3地点で大気粒子を採取し、OPAAの測定、EDXRF(Energy Dispersive X-ray Fluorescence)による元素成分分析、イオンクロマトグラフィーによる水溶性イオン成分分析を行った。その結果、粒子のOPAAと粒子中の複数の遷移金属濃度との間に強い相関が見られ、特にFeとCuとの相関が強かった。そこで溶解度や価数の異なる標準試薬を用いてFeとCuの化学形態とAAの酸化活性の関係を調べた。その結果、不溶性のFe試薬ではAAの酸化を抑制する反応が見られたが、水溶性のFe試薬および不溶性・水溶性のCu試薬ではAAを有意に酸化する反応が見られた。これは酸化還元電位による差だと考えられ、酸化還元電位がFeではAAより低く、Feイオン、Cu、CuイオンはAAより高いのでこのような結果を示したと考えられる。また、Fe・Cu試薬にH2O2を添加したところ、すべての試薬においてOPAAが上昇した。しかし、金属試薬を入れずH2O2単独の場合では、AA消費速度はブランクと差が見られなかった。金属成分とH2O2を同時に入れたことによってOPAAが上昇したことから、Fenton反応によって生じたヒドロキシルラジカルがAAの酸化に寄与していると考えられる。

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