2022 年 57 巻 2 号 p. 66-76
2016年5月2日–2021年3月29日に新潟県保健環境科学研究所敷地内(新潟曽和)において、従来の4段フィルターパック法(OFP法)とPM2.5用インパクタを装着したフィルターパック法(IFP法)の並行測定を実施し、ろ紙表面のガス・粒子間の変化や付着物による過大評価(以下総称して、アーティファクト)の影響を比較した。併せて、長期的なトレンド解析に資するため両法の一致性およびデータの連続性を検証した。その結果、粒子状成分であるnss-SO42−は両法の一致性が高かったが、Cl−の一致性はインパクタ表面の付着物を算入するかどうかに大きく左右された。また、NO3−およびNH4+は季節により一致性が変化し、対応するガス状成分(HNO3、NH3)と相反する挙動を示したことから、OFP法とIFP法とでは生じるアーティファクトの程度が異なると考えられた。さらに、インパクタ表面には海塩や土壌由来の成分が付着しており、風速との相関関係が認められたことから、OFP法では強風下での雨滴や大気中の浮遊粒子の付着によるアーティファクトが生じる可能性が示唆された。粒子状物質と対応するガス状物質との和(HNO3+NO3−、NH3+NH4+、HCl+Cl−、SO2+nss-SO42−)として評価した場合は、いずれも両法の一致性は高く、特にHCl+Cl−はインパクタ表面の付着物を加えることで明確に一致性が改善した。したがって、OFP法における過剰捕集分を補正したガス・粒子の和として評価することで、OFP法およびIFP法の一致性は高く、これまで得られたデータとの連続性は保たれると考えられた。