2025 年 60 巻 5 号 p. 76-86
PM2.5は大気中に浮遊している粒径2.5 µm以下の微粒子であり、呼吸器系・免疫系に悪影響を及ぼすことが知られている。しかし、PM2.5は季節や発生源によって構成成分が異なるため、その健康影響を規定する要因は明らかになっていない。PM2.5による健康影響の規定要因を明らかにするため、季節および抽出成分の異なるPM2.5が呼吸器系および免疫系細胞に及ぼす影響の異同について検討することを目的とした。被験物質は、2013年4月~2018年3月に埼玉県環境科学国際センター(埼玉県加須市)でフィルター法により捕集されたPM2.5を季節ごとの水溶性成分と脂溶性成分に分け、呼吸器系とPM2.5との最初の物理化学的接点である気道上皮細胞、免疫応答の開始細胞である抗原提示細胞に曝露した。その結果、気道上皮細胞に対しては、PM2.5の脂溶性成分が細胞活性化反応を、抗原提示細胞に対しては、PM2.5の水溶性成分が催炎症性反応を示し、その影響は季節によっても異なったが、特に、秋季の水溶性成分は、抗原提示細胞に対して強い催炎症性を示した。成分別にみると、OC4が催炎症性反応の指標と最も高い正相関を示した。秋季の水溶性成分には野焼きの影響が大きく出ていることが示唆されるため、野焼き由来のPM2.5によって強い催炎症性を示した可能性が考えられる。