大気汚染学会誌
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二酸化窒素の急性, 亜急性および慢性暴露によるラットの脂質過酸化と肺の抗酸化性防御機構の変化について
市瀬 孝道嵯峨井 勝久保田 憲太郎
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1983 年 18 巻 2 号 p. 132-146

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抄録

NO2の生体影響について脂質過酸化の面から, Wistar系雄ラットを用いて急性, 亜急性および慢性暴露実験を行った。
10ppm NO22週間暴露では過酸化脂質生成は1日目に減少したがその後3~4日目に対照群の2倍に増加した。しかし, その後ふたたび低下し5~10日目には対照レベルへ戻った。一方, 過酸化脂質ににる障害から生体を防御するGlutathione peroxidase (GPx), Glutathione reductase (GR), Glucose-6-phosphate dehydrogenase (G6PD), Superoxide dismutase (SOD), Disulfide reductase (DSR) 等の酵素活性と還元型グルタチオン (GSH) 等は初期に低下するが3日目より増加しはじめ, 5~7日目にはMaximumレベルに達し14日目までそのレベルを維持し, 過酸化脂質生成とは対称的なinverse re1ationshipを示した。0.4PPm, 1.2ppmおよび4ppm NO2の4カ月暴露の亜急性暴露実験でも1カ月目までは急性暴露の場合と同様の変動パターンを示したが, 2~4ケ月目にかけて過酸化脂質はふたたび徐々に増加した。一方, 防御系酵素活性は逆に徐々に低下して対照レベルに近づく傾向を示し両者の間にはやはりinverse relationshipが成り立っていた。0.04ppm, 0.4ppmおよび4ppm NO2の9, 18おにび27カ月暴露の慢性実験においても呼気中エタン測定ににる過酸化脂質生成は0.04ppm 9カ月暴露の時点からすでに有意に対照群より増加し, その増加はNO2濃度の増加にともなって上昇し, かつNO2暴露期間の延長につれて増加していた、しかし4ppm 27カ月暴露の場合はエタン生成はむしろ減少していた。これは回復を意味するものではなく, むしろ肺組織の質的変化を意味するものと考えられ, 病理学的検討の結果からもこのことは支持されている。

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