抄録
大気浮遊粒子状物質中に定量されている発がん物質中diethylnitrosamine (NDEA) とbenzo (a) pyrene [B (a) P] の呼吸器官に対する発がん性の比較を雄性シリアンゴールデンハムスターを用いて行った。1回投与量0.5mgの各物質を0.1mlのリン酸緩衝液に溶解又は懸濁し, 1週間, 連続15週間, 投与総量7.5mg, をハムスターの気管内に投与した。対照群ではリン酸緩衝液のみを投与した. 投与終了後はハムスターは無処置で放置し, 死亡したハムスターについて主に呼吸器官の腫瘍発生を病理組織学的に検索した。
その結果, NDEA群では検鏡できた14匹中全例に呼吸器官の腫瘍の発生があり, 腫瘍発生率は100%であった。これに対してB (a) P群では16匹中11匹に呼吸器官の腫瘍の発生があり, 腫瘍発生率は69%であった. 対照群では12匹中1匹に呼吸器官の腫瘍の発生があり, 腫瘍発生率は8%であった. さらに, 担腫瘍動物の平均生存日数はNDEA群188日, B (a) P群479日とNDEA群がB (a) P群に比べてはるかに短く, NDEA群とB (a) P群との間の腫瘍発生率の差は0.1%のレベルで有意な差が認められた.
これらのことより, NDEAの呼吸器官に対する発がん性は同量のB (a) Pに比べ著しく強いことが認められた。