抄録
夏期に, 東京湾沿岸地域から高濃度Oxを伴う大気汚染物質が内陸部の長野県まで長距離輸送される現象がみられる。1983年7月28-30日に高崎と軽井沢において3時間ごとに行った炭化水素成分の測定データを主に用いて, 汚染気塊の長距離輸送時における炭化水素の濃度や組成の特徴およびその光化学反応について解析した。
長距離輸送時にはOx濃度ともにトルエンの濃度が増加し, 特にトルエンの炭化水素に占める割合は顕著に増加し, 輸送前に比べ約2倍にもなった。長距離輸送された汚染気塊中の炭化水素組成は東京湾沿岸地域の組成と良く一致し, 東京湾沿岸地域から大気汚染物質が100km以上も長距離輸送されたことが裏付けられた。
長距離輸送された汚染気塊中の炭化水素のアセチレン比は光化学反応により減少し, その減少率は光化学反応性の強い成分ほど大きかった。この減少率から, 長距離輸送された汚染気塊中のOHラジカル濃度は, 高崎, 軽井沢間では (1.5±0.2) ×10-7ppmと推定され, この値は都市における濃度とほぼ一致することを示した。