大気汚染学会誌
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ハムスターにおける1-nitropyreneとbenzo (a) pyreneの呼吸器官に対する発がん性の比較
山本 昭代稲益 健夫久永 明北森 成治石西 伸
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1987 年 22 巻 1 号 p. 29-35

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抄録

1-nitropyrene (1-NP) は, ディーゼルエンジン排気ガス中, コピーのトーナー液, 大気浮遊粒子中に検出され, 高い直接変異原活性を示すために最近発がん性に関して注目を集めている。そこで, 大気汚染物質で発がん性のあるbenzo (a) pyrene (B (a) P) と1-NPの呼吸器官に対する発がん性の比較を雄性シリアンゴールデンハムスターを用いて行った。1回投与量2.0mgの各物質を0.2mlのリン酸緩衝液に懸濁し, 1週間に1回, 連続15週間にわたり, 投与総量30mgをハムスターの気管内に投与した。投与終了後はハムスターは無処置で放置し, 死亡したハムスターについて主に呼吸器官の腫瘍発生を病理組織学的に検索した。
その結果, 1-NP群では検鏡できた21匹中2例に呼吸器官の腫瘍の発生があり, 腫瘍発生率は10%であった。これに対してB (a) P群では22匹中19匹に呼吸器官の腫瘍発生があり, 腫瘍発生率は86%であった。対照群では腫瘍の発生はなかった。さらに, 担腫瘍動物の平均生存日数は1-NP群481日, B (a) P群246日とB (a) P群が1-NP群に比べてはるかに短く, 1-NP群とB (a) P群との間の腫瘍発生率の差は0.1%のレベルで有意な差が認められた。
これらのことにより, B (a) Pの呼吸器官に対する発がん性は同量のB (a) Pに比べ著しく強いことが認められた。

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