大気汚染学会誌
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児童の咳訴症率と大気汚染濃度
影響の大きさと疫学的下限値の推定
清水 忠彦
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1987 年 22 巻 1 号 p. 57-71

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抄録

大阪府医師会では, 1973年~1985年の隔年に, 大阪府全公立小学校児童 (延べ6,449校, 5,480,443人) の “ふだんからの咳” の自覚症状について, 質問紙法による調査を実施した。
その調査成績を解析し, 次の結果を得た。
(1) 大阪府では, 1973~1981年間に, 二酸化硫黄濃度が著しく減少, 二酸化窒素濃度が横ばいであった。汚染地域と対照地域との咳訴症率の地域差は, この間に二酸化硫黄濃度の低下に応じて減少した。しかし, 1981年以降は, 二酸化硫黄濃度の低下にかかわらず, 咳訴症率の地域差が横ばいになった。咳訴症率に影響した二酸化硫黄濃度の下限値は, 年平均0.013~0.015ppmであった。
(2) 社会環境がほぼ似ていると思われる大気汚染観測局 (27局) の周辺1km以内の学校 (調査児童数89, 866人) の咳訴症率と二酸化窒素濃度とは, 家族の喫煙の間接影響を補正すると, 相関係数+0.708 (P<0.001) であった。
咳訴症率に影響した二酸化窒素濃度の下限値は, およそ年平均で0.020~0.025ppmであった。
(3) これらの成績から, 咳訴症率と大気汚染濃度との関係を示すモデル式を提唱した。

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