大気汚染学会誌
Online ISSN : 2186-3695
Print ISSN : 0386-7064
ISSN-L : 0386-7064
定常近似法によるNO, NO2の反応拡散モデルの長期平均濃度への適用
木村 富士男椎橋 正幸
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 23 巻 1 号 p. 41-51

詳細
抄録
道路周辺や都市域でのNOからNO2への反応拡散モデルはいくつか提案されている。このなかで木村 (1978) による定常近似法は, どのような拡散式にも応用でき, しかも経験的に決定しなければならないパラメータを含まない, 理論的なモデルである。しかしながら, 短時間平均濃度を対象とすること, バックグランドのO3, NO2濃度を与えなければならないなど, 実用上には使いにくい面があった。この報告では, 理論モデルとしての長所を持ったまま, これらの欠点を改善する。
モデルに必要なバックグランド濃度を, 少数の常時観測点の実測濃度から, 期別時間帯別に推定する方法を示す。しかもその値に空間的代表性があることも示す。次に期別時間帯別の長期平均濃度に対する変換公式を導く。その際, 新しいパラメータとして, 短時間平均濃度の変動係数が導入される。この公式はごく簡単な代数計算により, 実測されたNOXの長期平均濃度を高い精度でNO2の長期平均濃度に変換することができる。
年平均値に対しても, 変換率は近似的に一本の曲線で表される。両対数グラフに書くと極めて緩やかな曲線となり, 統計モデルと良く一致する。結果的には, このモデルは統計モデルの理論的裏づけを与えることにもなる。さらに統計モデルにおける常時観測局と自動車排ガス局とのパラメータの違いをも説明する。
著者関連情報
© 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top