抄録
アスベストによる室内環境汚染とその削減対策について, とくに最近の我が国の動向と京都大学において行った汚染削減対策を中心に論じた。アスベストの非職業的暴露については種々論議のあるところではあるが, その発がん性, 悪性中皮腫の発生等には閾値がないとする学説もあり, 現状では安全側の視点をもつべきであること, 教職員・学生等の健康面, 不安感への最大限の配慮, 教育研究機関としてより快適環境を求める必要性, などの理由からアスベスト削減対策を京都大学において実施した。吹付けアスベストが剥離・剥落状態で, 緊急対策が必要であると判断されたものが西部学生食堂, 教養部講義室に, 約2,000m2存在し, 作業場所のシート隔離, 撤去作業従事者の呼吸用保護具, 保護服の着用などの配慮策を講じた上で撤去を行った。
アスベスト濃度はアスベストの存在する室内において, 人的活動のない閉鎖状態では学内の一般環境濃度と大差ないものの, 資材搬入のあった人的活動状態では3.8f/1, ファン稼働状態では18f/1と閉鎖状態ならびに学内一般環境に比較して高い濃度となった。吹付けアスベスト撤去後の同一室内におけるアスベスト濃度の減衰状況を調査した結果, 撤去中に1,000~2,000f/1あたりまで上昇した場合, 十分な減衰には1週間程度必要であった。撤去後室内のアスベスト濃度は閉鎖状態, 使用開始後とも一般環境と同レベルであることが確認された。