大気環境学会誌
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風速場・濃度場の差分解法による市街地沿道大気拡散モデル (III)
解析解型モデルとの比較
森口 祐一
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1995 年 30 巻 4 号 p. 256-267

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抄録

風速場と濃度場を差分法によって解く数値解型の自動車排出ガス拡散モデルを, 鉛直方向にのみ分布をもつ単純な風速場に適用し, 従来よく用いられてきた2種類の代表的な解析解型モデルによる計算結果との比較を行って, 濃度予測値の相互比較, 各モデルにおけるパラメータの相互関係の検討を行った。中立, 道路直交風条件における地表面濃度の距離減衰についての比較の結果, 解析解モデルの種類による結果のばらつきは, 数値解モデルにおける地表面粗度に関するパラメータと発生源の与え方を調整することにより, 表現可能な範囲のものであった。解析解型モデルの拡散パラメータが現地調査データなどに基づいて較正されたものであることを利用して, こうした比較から数値解モデルで与えるべき初期拡散効果の目安を得ることができた。一方, 解析解モデルの代表的モデルである正規型モデルは, 鉛直拡散幅σzのみを用いて濃度分布を記述しているため, 地表濃度の減衰など濃度分布の一部の特徴のみから拡散パラメータを推定した場合, 風速勾配の存在する場での濃度分布の全体像を的確に再現できていないことが裏付けられた。風速場の計算に比べて, 濃度場の差分計算は短時間で行えることから, 濃度場のみを解く数値解型モデルが, 単純な流れ場における濃度分布の全体像をより合理的に記述できるモデルとして実用になりうるものと考えられる。

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