大気環境学会誌
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SO2による植物のエチレン生成と障害との関係
裴 公英近藤 矩朗中嶋 信美石塚 皓造
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1995 年 30 巻 6 号 p. 367-373

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抄録

二酸化硫黄 (SO2) 暴露による植物の障害にエチレン生成が関与しているかどうかを解明することを目的として, SO2に暴露したトマト植物におけるエチレン生成と障害との関係について検討した。トマトを1.0ppmのSO2に暴露したのち, 光条件下で2時間インキュベートし, エチレン生成量を測定した。エチレン生成はSO24暴露により1時間以内に促進された。しかし, エチレン生成阻害剤のaminoethoxyvinylglycine (AVG) の処理によってSO2によるエチレン生成は完全に抑制された。この結果は, SO2によって生成されたエチレンは1-aminocyclopropane-1-carboxylate (ACC) 経路で生合成されたことを示唆している。葉のクロロフィル量はSO2暴露により減少した。また, 葉片からの電解質の漏出はSO2暴露したものの方が対照と比べて2倍ほど高く, SO2により細胞膜の透過性が増大したことが示唆された。一方, あらかじめAVG処理したもではSO2によるクロロフィルの減少は著しく抑制されたが, SO2暴露後にエチレンを処理するとクロロフィルは顕著に減少した。しかし, エチレン処理のみではクロロフィル量に影響を与えなかった。これらの結果は, SO2はエチレン生成を促進し, このエチレン生成がクロロフィルの分解や細胞膜の透過性の増大に部分的に関与していることを示唆している。

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