大気環境学会誌
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地下街およびその近傍の地上部における浮遊粒子状物質の粒子径分布と呼吸気道各部への局所沈着率
高橋 千太郎山田 裕司江坂 文孝仲本 理恵子古谷 圭一
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1995 年 30 巻 6 号 p. 391-397

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抄録

地下街における浮遊粒子状物質の粒子径分布の特徴とヒト呼吸器各部への沈着率を明らかにするため, 都内4ヶ所の地下街とその近傍の地上部において浮遊粒子状物質の粒子径を測定した。拡散バッテリーと凝縮核粒子計測装置によって測定された超微粒子 (0.003~0.3μm) の粒子個数濃度の平均値は, 地下街および地上部で, それぞれ, 5.6および12.6×104個/cm3であり, その差は, 主として0.01μm以下の粒子数濃度の差によるものであった。また, レーザー式粒子数計測装置によって測定された浮遊微粒子についても地上部と地下街の間で粒子径分布に差が認められた。すなわち, 0.3~0.5μmの粒子径範囲では, 相対粒子数濃度 (全測定粒子数に対する比率) に地下街と地上部で有意な差は認められないものの, 0.5~1.0μmの粒子径範囲では, 地下街の相対粒子数濃度は地上部に比べ有意に高く, 一方, 1.0~3.0および3.0~5.0μmの粒子径範囲では, 地上部の相対粒子数濃度が地下街に比べ高い傾向を示した。レーザー粉塵計で測定した粒子質量濃度の近似値は, 全測定点の平均で地上部および地下街において, それぞれ, 46および39μg/m3であり, 有意な差は認められなかった。得られた粒子径分布をもとに, 同じ質量濃度の浮遊粒子状物質を吸入したと仮定し, 呼吸器各部への局所沈着率を推定すると, 鼻咽喉頭部, 気管・気管支部および肺深部への質量基準の沈着率はそれぞれ, 地上では54.9, 8.0, および14.7%, 地下街では51.1, 8.0, および16.9%であった。

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