大気環境学会誌
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パッシブサンプラーを用いた空気中有機ハロゲン化合物の簡易分析法
雨谷 敬史烏蘭 参丹松下 秀鶴
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1996 年 31 巻 5 号 p. 191-202

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抄録

Passive samplerを用いた, 室内空気中の9種類の有機ハロゲン化合物濃度およびこれらの化合物の個人曝露濃度を精度良く測定しうる簡易分析方法を開発した。
本法は分子拡散を利用した有機ハロゲン化合物の捕集, トルエンを用いた振盪抽出, GC/ECDによる分離分析の諸操作から成り立つ。用いたsamplerは, 多孔質PTFEチューブに活性炭を詰めたもので, 市販品を改良して有効捕集長と活性炭の充填量を均一にしたものである。Passivesamplerによる各化合物の捕集量から空気中の濃度への換算式は, 一般環境でのactive samplerとの併用実験結果から求めた。Passive samplerへの各化合物の添加回収率はo-dichlorobenzeneの80.1%を除けば88.3-106.3%とおおむね良好であり, また, 本サンプラーは, アルミニウム製の袋の中にしまうことで少なくとも一週間は安定であることを確認した。本分析法は高感度で, 各化合物の定量下限値は1。4-99pg (s/n=10) の範囲にあった。サンプリングから分析に至る全過程を含む測定値のサンプラー間のばらつきはcv値で3.1-8.4%と小さく, 室内等の実態調査に使用可能と判断された。有機ハロゲン化合物の室内および個人曝露濃度測定の一例として, 静岡市における2家庭の屋外・居間・台所・寝室・浴室, およびその家庭内の協力者1名の個人曝露濃度測定を行った結果, 9種類の分析対象化合物のうち7種類が検出された。

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