大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
人工酸性雨暴露に伴う土壌理化学性の変化とスギ, ヒノキ, サワラの根の生育
河野 吉久松村 秀幸小林 卓也
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 31 巻 5 号 p. 203-212

詳細
抄録

黒ボク土に植栽したスギ, ヒノキ, サワラに対して人工酸性雨 (SAR) を23ヵ月間暴露し, 土壌の理化学性の変化と根の乾物生長との関係について検討した。SARのpHは4.0, 3.0, 2.0および純水 (pH5.6) の4段階とし, 暴露したSARの総降水量は2460, 3960および5450mmの3段階を設定した。また, 土壌養分条件として施肥・無施肥の2区分を設けた。
土壌pHは, 暴露したSARのpHが4.0の場合にはpH5.6との間に差異がみられなかった。pH2.0のSARを23ヵ月間暴露した結果, 土壌pHは4.0に低下した。施肥した区画の方が無施肥の場合よりも土壌pHが低い傾向にあったが, 暴露した総降水量, 植栽した樹種の相違は, 土壌pHに対して有意な影響を与えなかった。
SARを5450mm暴露したスギ植栽土壌を対象にして, 水溶性と交換性塩基類とAlの濃度について検討した。その結果, pH2.0のSARを暴露した場合, 土壌pHの低下に伴って交換性のCaおよびMg濃度の低下と水溶性Al濃度の顕著な上昇がみられた。このため,(K+Ca+Mg)/Alのモル濃度比は顕著に低下した。この比の経時変化を検討した結果, SARの暴露を開始してから1年後の時点でほぼ平衡状態に達していた。
無施肥条件下の根の乾物重量を検討した結果, SAR暴露によって (K+Ca+Mg)/A1のモル濃度比が顕著に低下し, A1濃度が高くなっても, 供試した針葉樹の根の乾物重量には有意な影響がみられなかった。このため, 酸の負荷に伴う土壌酸性化現象が, 供試した針葉樹の衰退要因となる可溶性は小さいものと考えられた。

著者関連情報
© 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top