大気環境学会誌
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地下鉄およびその近傍の地上部における大気中浮遊粒子状物質の特性
沖永 希世高橋 千太郎津越 敬寿工藤 善之古谷 圭一荒木 庸一
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2000 年 35 巻 1 号 p. 12-20

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抄録

地下生活環境における空気質の特性に関する知見を得るために, 東京都の営団地下鉄銀座線の駅構内における空気中浮遊粒子状物質の質量濃度, 化学組成, 並びに粒子径分布について検討した。ダストカウンターによって測定されたSPMの質量濃度の近似値は, おおむね0.06-0.12mg/m3であり, いずれの駅でもビル管理法の基準値を下回る結果であった。地下鉄駅構内SPMの大気質量濃度の近似値には各駅ごとに顕著な変動が見られたが, その変動パターンは測定日にかかわらず比較的一定であった。一方, 地下鉄駅近傍の地上部分の質量濃度には駅間の変動が認められず, 各駅間でみられた質量濃度の差は, 換気状態や空調システムといった各駅固有の要因によるものと推察された。SPMの粒子径分布の特徴は粒径範囲0.3-0.5μmの相対濃度が測定したすべての駅構内で近傍の地上より低い値を示した。一方, 粒径範囲0.5-1.0, 1.0-3.0μmのSPMの相対濃度は駅構内の方が近傍の地上より高い値を示した。すでに大規模な地下街においても, 同様な傾向が見いだされており, 一般的な地下空間におけるSPMの粒子径分布の特徴と考えられた。駅構内で捕集されたSPMは, SEM-EDXおよび蛍光X線分析により地上で採取されたSPMに比べて相対的に金属ヒューム状粒子が多く, その主成分として鉄が多く含まれていることが示された。

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