2000 年 35 巻 6 号 p. 332-342
本研究では, 粒状の金属スズを充填した乾式還元層における塩化第二水銀ガスの乾式還元に関する実験を行い, 乾式還元プロセスに及ぼす影響因子の同定および乾式還元部で生じている反応を明らかにすることを目的とした。塩化第二水銀ガスの金属スズによる乾式還元反応では, 金属スズ表面の塩化されている割合が重要な因子であり, あらかじめ1N塩酸で金属スズ表面をプレコートすることが還元能の維持に効果的であった。塩化した粒状金属スズ表面において, 次のような2種類の並行する還元反応によって塩化第二水銀は金属水銀に還元されることがわかった。
SnCl2 (s) +HgCl2 (g) →SnCl4 (g) +Hg (g)
SnCl2 (s) +HgCl2 (g) +2H20 (g) →SnO2 (s) +Hg (g) +4HCl (g)
更に, 粒状スズの表面に形成された塩化第一スズは, 次のような酸化反応によって消費される。これらの反応は上記の塩化第二水銀反応に比べて支配的に進むため, これらの酸化反応が還元率低下の主たる原因であると推測された。
SnCl2 (s) +H20 (g) →SnO (s) +2HCl (g) SnCl2 (s) +H20 (g) +1/202 (g) →SnO2 (s) +2HCl (g)