大気環境学会誌
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三宅島火山ガスによる高濃度二酸化硫黄および硫酸性強酸性雨の観測
松本 利恵唐牛 聖文米持 真一村野 健太郎
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2002 年 37 巻 6 号 p. 357-373

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抄録

2000年7月の三宅島大噴火以降, 関東地方では著しい大気中のSO2濃度の上昇や大気降下物の酸性化が観測されている。そこで, 埼玉県における大気降下物や大気中のSO2濃度に対する三宅島火山の影響について検討を行った。1999年4月から2001年3月にかけて埼玉県内5地点で酸性雨ろ過式採取装置を用いた大気降下物の観測を行った。その結果, 関東地方各地で大気中のSO2濃度が上昇した2000年8月から10月は, 1999年の同時期と比べて, 大気降下物のpHは低下, nss-SO42-の降下量は増加し, 硫黄酸化物の大気降下物への汚染寄与が大きくなった。
騎西に設置した酸性雨自動イオンクロマトグラフ分析装置により降雨量1mmごとに測定した2000年9月から10月初めの降雨のイオン種濃度変動と上空に存在する気流の関係を検討した。その結果, 上空に三宅島から騎西へ向かう気流が存在するときに降雨のpHの低下およびnss-SO42-濃度の上昇が生じ, 高いときにはnss-SO42-が陰イオンの約90%を占めていた。更に気流の方向により降雨の酸性化やnss-SO42-濃度上昇の程度が短時間で変化したことから, 火山から約220km離れた騎西の降雨に対する三宅島火山起源の硫黄酸化物の影響が明らかになった。降雨を伴う期間の騎西における大気中SO2濃度変動について検討したところ, 火山放出物が安定した上空を移流する場合には大気安定度が, 強風に吹き下ろされて低空を移流する場合には三宅島からの輸送経路途中の降雨による洗浄効果が大きな要因となっていた。

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