大気環境学会誌
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降水中微量金属元素濃度比と鉛同位体比による長距離輸送と地域汚染の解析
日置 正中西 貞博向井 人史村野 健太郎
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2008 年 43 巻 2 号 p. 100-111

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抄録
降水に対する長距離輸送の影響と地域汚染の影響とを個別に評価することを目的として, 主に大陸からの大気汚染物質の長距離輸送の影響を受けると考えられる京都府丹後半島の弥栄町と, 京都府南部および大阪平野等の地域汚染の影響を受けると考えられる京都府八幡市において2000年4月から1年間, 同日降水を採取した。降水中のイオン種濃度, 金属元素濃度, 金属元素濃度比および鉛同位体比の観測結果に後方流跡線解析を適用し, 降水中成分に対する人為汚染物質や土壌元素の長距離輸送および地域汚染の影響を評価した。
弥栄, 八幡ともにほぼ陰イオンと陽イオンがバランスしていたが, イオン種の当量濃度の総量は弥栄が八幡より大きくなっていた。また, 内陸に立地する八幡に比べ弥栄では海水の影響が顕著であった。主たる発生源が人為起源と考えられる元素では, 八幡および弥栄における濃度レベルおよび濃度変化が大きく異なり, 土壌起源と考えられる元素では比較的一致していたことから, 人為起源元素については大陸および朝鮮半島等からの長距離輸送に加えて地域的な発生源の影響を受けているものと考えられた。降水中のPb/Zn比, Sr/Mn比, Pb/Cd比およびV/Mn比を用いた解析により, 弥栄では長距離輸送される大気汚染物質の影響が想定される場合, これらの濃度比が高くなることが観測された。また, 八幡では都市大気エアロゾル中の金属元素濃度比と降水中の金属元素濃度比が整合的であった。気塊が中国中部や朝鮮半島を経由するときに弥栄で高い鉛同位体比が観測され, 八幡では地域汚染の影響で鉛同位体比が低くなる傾向を示しており, これら金属元素濃度比や鉛同位体比の長距離輸送や地域汚染の指標としての有効性が明らかとなった。
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