抄録
症例は中国在住の71歳男性. 黄疸と褐色尿を主訴に現地病院を受診した際, 閉塞性黄疸と診断され, 精査加療の目的にて帰国後当院に入院した. 入院後PTBDを施行したところ, 排液胆汁より無数の肝吸虫の虫卵を検出し肝吸虫症と診断した. さらに腹部CTおよびMRCPにより膵頭部癌と診断した. プラジカンテルの投与によりドレナージチューブより多数の虫体が排泄されたが, その後も黄疸は改善せず全身状態は悪化し, 肝不全のため第61病日に死亡した. 剖検所見において肝吸虫は膵管内には認められなかった. 両疾患の併存例の報告は稀であり, 興味深い症例と思われた.