抄録
胆嚢癌の鑑別診断における超音波ドプラによる壁在胆嚢動脈の最大血流速度(Vmax)解析の成績と胆嚢疾患にみられる壁在動脈の組織学的知見から血流解析の意義について検討した.自験46症例の解析の結果Vmaxは胆嚢癌14例で45.0±13.2 cm/sと高値を示し慢性胆嚢炎,胆嚢ポリープ,胆嚢腺筋症(ADM)と比べ有意差がみられた(p<0.01).Vmaxによる鑑別診断のROC解析結果はcut-off値35.2 cm/sにおいてAUC 0.929,感度85.7%,特異度88.2%であった.病理組織学的には腫瘍基底部に限局した胆嚢動脈内膜の線維性肥厚と内腔の狭小化が確認され血流速度増加の原因と考えられた.これらの限局性変化は非癌部や良性疾患ではみられなかった.すなわち腫瘍基底部における血流解析は癌性変化を直接評価しているものと考えられ術前鑑別診断としての臨床的有用性が高いものと考える.