抄録
要旨: 60歳代男性,心窩部痛を主訴に2008年4月末に当院受診し,胆道系酵素上昇,胆管と胆嚢壁の肥厚,胆嚢内ガス像,高度炎症所見を認め,急性胆管炎·胆嚢炎,敗血症の診断で緊急内視鏡的経鼻胆道ドレナージを施行した.その後,状態は改善傾向であったが,5月中旬になり経鼻胆道チューブからの出血と貧血進行を認め,造影CTにて胆嚢出血が疑われた.血管造影にて胆嚢動脈からの造影剤の血管外漏出像を確認し,coilにて胆嚢動脈を塞栓し止血し得た.止血後の胆道造影では肝門部胆管は狭窄し,Mirizzi症候群を呈していた.開腹すると胆嚢は著明に萎縮し,周囲と高度に癒着していた.胆嚢頚部肝側に径1 cm大の血腫を認めたが,胆道との交通は確認できなかった.胆嚢摘出術を行ったが,胆嚢内に出血塊も確認できなかった.外傷性·医原性を除く胆嚢出血に対し,TAEにて止血し待機的に手術を行い得た報告は自験例を含め2例であり貴重な症例と思われ報告する.