2011 年 25 巻 5 号 p. 774-778
要旨:症例は80歳女性.1982年に胆石症に対し開腹胆嚢摘出術を施行された.2010年1月前医の精査にて中部胆管に腫瘍性病変を認め,当科紹介となった.血液検査上,胆道系酵素の上昇は認めず,腫瘍マーカーも全て基準値内であった.造影CT上,中部胆管に造影効果を有する境界明瞭な片側性の腫瘤を認めた.同腫瘤は,MRIのT2WIおよび拡散強調画像上,高信号病変として描出された.超音波内視鏡検査では,点状高エコーを有する低エコー腫瘤として描出された.FDG-PET検査では腫瘍に淡い集積を認めた.擦過細胞診では悪性所見を認めなかった.胆管癌を否定できず,肝外胆管切除を施行した.切除標本では,粘膜面は平滑で境界明瞭な充実性腫瘍であった.術後病理標本では腫瘍部に悪性細胞認めず,粘膜下に神経繊維束の密な増生を認め,断端神経腫と診断した.胆嚢摘出後の中部胆管の片側性で境界明瞭な腫瘤性病変では,胆管断端神経腫も鑑別診断として念頭に置く必要がある.